
製薬業界はグローバル化が急速に進み、英語力はもはやオプションではなく必須スキルとなっています。国際共同治験、海外当局との折衝、グローバルチームでの協働など、あらゆる場面で高度な英語コミュニケーション能力が求められる時代です。
しかし、製薬業界で必要とされる英語は一般的なビジネス英語とは大きく異なります。専門用語や規制対応、科学的議論など、業界特有の高度な英語力が必要であり、一般的な英語研修では十分な成果を得られないケースも少なくありません。
この記事では、製薬業界における英語研修の重要性から、効果的なプログラムの選び方、導入事例、そして投資対効果の測定まで、現場の声と最新の研修サービス情報を交えて徹底的に解説します。
目次
製薬業界で英語力が不可欠な理由
製薬業界では、なぜこれほどまでに英語力が重視されるのでしょうか?その背景には、グローバル競争の激化と迅速な情報共有の必要性という二つの大きな要因があります。
グローバル化が加速する製薬ビジネス
世界中の製薬企業が画期的な新薬の開発を目指してしのぎを削る中、日本の製薬企業も国際競争に参加しています。海外企業との提携、共同研究、M&Aなどが日常的に行われ、これらの交渉や意思決定のほとんどが英語で進められます。
「かつては国内市場だけを見ていれば良かった時代もありましたが、今は研究開発から承認申請、マーケティングまで、すべての過程でグローバルな視点が求められます。英語は単なるスキルではなく、世界と繋がるための『共通言語』なのです」(国内大手製薬企業 国際事業部 部長)
英語が必要とされる業務プロセス
製薬業界のバリューチェーン全体で、英語は不可欠なツールとなっています。
業務プロセス | 英語が必要な具体的なシーン | 求められる英語スキル |
---|---|---|
研究開発(R&D) | 最新論文の理解、国際学会発表、海外研究者との共同研究 | 専門用語の理解、学術英語、プレゼンテーション能力 |
臨床開発 | 国際共同治験、プロトコル作成、CROとの連携 | 医学英語、文書作成能力、交渉力 |
薬事(RA) | 規制当局対応、CTD作成、GMP査察対応 | 規制用語の理解、正確な文書作成能力、質疑応答力 |
マーケティング・営業 | グローバル戦略策定、海外市場分析、国際会議 | プレゼン能力、マーケティング英語、説得力 |
製造・品質管理 | 海外工場との連携、査察対応、SOPの理解 | 技術英語、品質管理用語、手順説明能力 |

キャリアパスと英語力の密接な関係
高い英語力は、製薬業界でのキャリアパスを大きく広げます。海外のグループ会社への駐在、国際的なプロジェクトのリーダー、あるいは外資系製薬企業への転職など、選択肢は無限大です。
実際、多くの製薬企業では管理職登用の要件としてTOEIC 700点以上などの基準を設けているケースも少なくありません。英語力があれば、単に業務をこなすだけでなく、海外の同僚やパートナーと深い信頼関係を築き、より大きなビジネスチャンスを掴むことができるのです。
現場の声
「医薬品の承認申請資料やSOP(標準業務手順書)の英文作成が急増し、TOEIC700点レベルでは実務で追いつかない。現場で使える”薬事英語”の習得が死活問題になっている」(国内大手製薬会社 開発部門 T氏)
製薬業界で求められる英語スキルの特殊性
製薬業界で求められる英語スキルは、一般的なビジネス英語とは大きく異なります。その特殊性を理解することが、効果的な研修プログラムを選ぶ第一歩です。
臨床試験関連の英語力
臨床試験は新薬開発の核心部分であり、国際共同治験が一般的になっている現在、プロトコル作成から結果報告まで、すべてのプロセスで高度な英語力が求められます。
特に重要なスキルには以下が含まれます:
- ICH-GCPに準拠した文書作成能力
- CRF(症例報告書)の英語での記載
- 統計解析結果の英語での解釈と説明
- 有害事象報告書の作成
- 海外の医師・研究者との専門的ディスカッション
薬事申請書類作成スキル
新薬の承認申請に必要なCTD(Common Technical Document)は、日本、米国、欧州で共通のフォーマットが使用されており、英語での作成が標準となっています。
求められるスキル:
- 非臨床試験データの英語での要約作成
- 品質に関する英語文書の作成
- 規制当局からの照会事項への回答
- 承認後の定期的な安全性報告書の英語での作成
- FDA/EMAなど海外当局とのコミュニケーション
学術的コミュニケーション能力
製薬業界では、国際学会での研究発表や学術論文の執筆が重要な業務の一つです。トップジャーナルへの論文投稿や国際学会での口頭発表は、企業の研究力を示す重要な指標となっています。
必要なスキル:
- 学術論文の執筆と投稿
- ポスターセッションでのプレゼンテーション
- 質疑応答への即時対応
- KOL(Key Opinion Leader)との専門的議論
- 最新の研究成果の理解と解釈
製薬業界向け英語研修の種類と特徴
製薬業界特有のニーズに対応した英語研修には、様々な形態があります。それぞれの特徴を理解し、自社や個人のニーズに合ったプログラムを選ぶことが重要です。
1. 業界特化型 英語研修
特徴:GMP、薬事規制、治験、PV(ファーマコビジランス)など、製薬業界独自の用語と業務フローに特化したプログラム
対象者:開発・薬事・安全性・R&D・生産・CSOなど全職種
代表的な内容:
- 薬事申請書類の英語添削・模擬会議ロールプレイ
- 海外当局QAトレーニング
- 英語での査察・監査対応
- 臨床試験関連文書の作成演習
メリット:実務に直結する内容で即効性が高く、専門用語や業界特有の表現を効率的に学べる
2. オンライン英語研修(eラーニング含む)
特徴:多忙な現場に合わせて24時間受講可能。録画講義+ライブディスカッションやAIスピーキングなど多彩な学習形態を提供
メリット:忙しいMR/開発担当もスキマ時間で学習可能、地理的制約がない
代表的な内容:
- オンデマンドビデオレッスン
- バーチャルクラスルーム
- AIを活用した発音矯正
- モバイル学習アプリ
- マイクロラーニングコンテンツ(5-10分の短時間学習)

3. 個別カスタマイズ・コーチング型研修
特徴:現場課題や業務内容に応じてカリキュラムをオーダーメイドで設計。個人のニーズに合わせた高度な指導を提供
メリット:最も効果的で、実務に直結する成果が期待できる。具体的な業務課題を英語で解決する力が身につく
導入事例:
- 「海外当局向けのプレゼン対策研修」
- 「薬事申請書類の徹底添削」
- 「グローバル会議通訳トレーニング」
- 「FDA査察対応シミュレーション」
【比較表】製薬業界向け英語研修サービス徹底比較
主要な英語研修サービスを比較し、製薬業界特化度や特徴を一覧にまとめました。自社のニーズに合ったサービスを選ぶ際の参考にしてください。
サービス名 | 特徴 | 研修形式 | 製薬業界特化度 | 価格帯 | 無料体験 |
---|---|---|---|---|---|
アルク | 製薬専門カリキュラム。GMP・薬事・治験対応 | オンライン/対面 | ◎ | 中〜高 | あり |
ベルリッツ | 外資系強い。会話中心。グローバル対応 | オンライン/対面 | ○ | 中 | あり |
イーオン法人研修 | 大手。全国展開・個別カスタム | オンライン/対面 | ○ | 中 | あり |
トライズ | コーチング型・成果保証。実務英語に強み | オンライン | ◎ | 高 | 初回無料 |
GLOBIS | MBA英語に強い。管理職向け | オンライン | △ | 高 | あり |
Rosetta Stone | グローバル展開。AIアダプティブラーニング | オンライン | ○ | 中 | あり |
Linguage | 製薬特化。医療英語・薬事英語に強み | オンライン/対面 | ◎◎ | 高 | 要問合せ |
効果的な製薬業界向け英語研修プログラムの設計
英語研修の効果を最大化するためには、単に研修を実施するだけでなく、戦略的なプログラム設計が必要です。製薬業界特有のニーズを考慮した効果的なアプローチを紹介します。
職種別カスタマイズ研修の重要性
製薬業界では、研究職、開発職、薬事職、営業職など、職種によって求められる英語スキルが大きく異なります。効果的な研修プログラムは、各職種の実務に直結した内容で構成される必要があります。
研究職向け:
- 学術論文の執筆技法
- 国際学会での発表スキル
- 研究データの英語での解釈と説明
薬事職向け:
- 規制文書の作成技法
- 規制当局との英語でのやり取り
- 薬事規制に関する専門用語の習得
開発職向け:
- 臨床試験プロトコルの英語での作成
- CROとの英語でのコミュニケーション
- 臨床データの英語での解析と報告
実務シミュレーション型研修の活用
座学中心の従来型研修では、実際の業務で使える英語力を身につけることは困難です。製薬業界向けの英語研修では、実際の業務場面を再現したシミュレーション型研修が特に効果的です。
効果的なシミュレーション例:
- FDA査察の模擬対応
- 国際共同治験の症例検討会
- 海外KOLとの面談ロールプレイ
- 薬事当局への口頭説明
成功事例
「GMP査察の英語ロールプレイ研修を導入したことで、現場スタッフの自信と実践力が格段にアップ。海外当局の査察でも”即答力”が身につき、コミュニケーションの質が向上しました。」(大手外資系製薬会社・薬事部門)
継続学習システムの構築
英語力の向上は短期間では達成できないため、長期的な継続学習システムの構築が重要です。集中研修後のフォローアップ体制、定期的なスキルチェック、継続学習のためのリソース提供などを含む包括的なシステムが必要となります。
効果的な継続学習の仕組み:
- 月1回の英語ディスカッション会
- 業界関連の英語記事の読解演習
- 英語でのプレゼンテーション練習会
- 学習進捗の可視化ダッシュボード
- 同僚との学習状況共有機能
投資対効果(ROI)の算出と予算計画
英語研修への投資を正当化し、適切な予算配分を行うためには、投資対効果(ROI)の定量的な算出が重要です。製薬業界における英語研修のROI算出方法を解説します。
研修投資額の構成要素
製薬業界向け英語研修の投資額は、複数の要素から構成されます。直接的な研修費用に加えて、間接的なコストも含めた総投資額の把握が重要です。
直接的な費用:
- 研修プログラムの受講料
- 教材費
- 講師費用
- 研修会場費
間接的なコスト:
- 研修参加による業務時間の機会損失
- 研修運営に関わる人事部門の工数
- 継続学習システムの構築・運営費用
製薬業界専門の研修プログラムは、一般的なビジネス英語研修と比較して高額になる傾向があり、1人当たり年間50万円から150万円程度の費用が一般的です。間接コストは直接費用の30-50%程度に相当することが多いため、総投資額の算出時には必ず考慮する必要があります。
効果の定量化手法
英語研修の効果を定量化するためには、業務への具体的な貢献度を測定可能な指標で評価する必要があります。製薬業界では、以下のような指標が有効です。
定量的な効果指標:
- 海外売上高の増加率
- 国際共同治験への参画件数の増加
- 海外規制当局からの照会件数の減少
- 英語論文の採択率向上
- 国際学会での発表件数増加
- 翻訳外注費の削減
これらの指標を研修実施前後で比較し、改善度合いを金額換算することで、研修の直接的な経済効果を算出できます。例えば、薬事申請書類の翻訳外注費が年間1000万円削減された場合、これは研修の直接的な効果として計上できます。
長期的なROI計算モデル
英語研修の効果は長期間にわたって発現するため、複数年にわたるROI計算モデルの構築が重要です。初年度は研修投資が先行し、効果の発現は限定的ですが、2年目以降に本格的な効果が現れることが一般的です。
一般的に、製薬業界向け英語研修のROIは、3年間で150-300%程度となることが多く、投資回収期間は2-3年程度です。また、定量化が困難な効果(従業員のモチベーション向上、離職率の改善、企業ブランドの向上など)も、可能な限り金額換算を試みることで、より包括的なROI算出が可能になります。
成功事例と実践的なアドバイス
実際に英語研修を成功させた製薬企業の事例から、実践的な教訓を学ぶことができます。
大手製薬企業A社の事例
A社は、グローバル展開を加速させるため、全社的な英語力向上プログラムを実施しました。3年間で総額5億円の投資を行い、従業員の平均TOEICスコアを150点向上させることに成功しました。
成功要因:
- 経営陣の強いコミットメント
- 職種別カスタマイズ研修の徹底実施
- 海外部門との定期的な英語会議の制度化
- 学習進捗の可視化と表彰制度
成果:
- 海外売上比率が3年間で35%から55%に向上
- 投資対効果は250%を達成
- 国際共同治験のリード件数が倍増
中堅製薬企業B社の事例
限られた予算の中で効果的な英語研修を実施したB社の事例も参考になります。B社は、オンライン研修プラットフォームを活用し、年間1000万円の予算で全従業員の英語力向上を図りました。
工夫したポイント:
- 社内の英語上級者をメンターとして活用
- ピアラーニングシステムの構築
- 業務で実際に使用する英語文書のテンプレート化と共有
- マイクロラーニングの徹底活用
成果:
- 限られた予算でも着実な英語力向上を実現
- ROI180%を達成
- 社内コミュニケーションの活性化

【Q&A】製薬業界の英語研修でよくある疑問
製薬業界の英語研修に関するよくある質問とその回答をまとめました。
Q. TOEIC何点レベルが社内で求められますか?
A. 「海外部門やグローバルPJに関わるには最低700点以上、実務で通用するには800点以上が目安です。ただし、本当に必要なのは”TOEICに出ない薬事英語・会議対応力”です。スコアだけでなく、実践的なコミュニケーション力を重視する傾向が強まっています。」
Q. どんな業種・職種でも英語研修は必要?
A. 「開発・薬事・PV・生産技術・営業(MR)などほぼ全職種で必要です。特に若手・管理職候補は早めの受講が推奨されています。国内営業でも、グローバル製品戦略の理解や海外データの活用が求められるため、基本的な英語力は必須となっています。」
Q. 短期間で効果を出すコツは?
A. 「最も効果的なのは、実際の業務で使う資料やシチュエーションを研修に取り入れる”業務直結型”の学習です。例えば、実際の薬事申請書類や臨床試験プロトコルを教材として使用したり、実際の会議を想定したロールプレイを行ったりすることで、学習の効果と定着率が大幅に向上します。」
Q. オンライン研修と対面研修、どちらが効果的?
A. 「両方の良さを組み合わせたハイブリッド型が最も効果的です。基礎的な学習や自己学習はオンラインで、ロールプレイやディスカッションなど対人コミュニケーションが重要な要素は対面で行うと良いでしょう。最近ではVR技術を活用した臨場感のあるオンラインシミュレーションも登場しており、対面に近い効果が期待できます。」
今後の展望と新技術の活用
製薬業界の英語研修は、新技術の導入により大きく変化しようとしています。最新のトレンドと将来展望を紹介します。
AI技術の活用
人工知能技術の発達により、個別最適化された学習プログラムの提供が可能になっています。AI分析により、受講者の学習パターン、理解度、弱点を詳細に把握し、最適な学習コンテンツと学習順序を自動的に提案するシステムが実用化されています。
製薬業界での具体的活用例:
- 薬事英語の自動添削システム
- 専門用語の適切性チェック
- 個別化された学習プラン生成
- 発音矯正とスピーキング練習の自動化
VR・AR技術の導入
バーチャルリアリティ(VR)や拡張現実(AR)技術を活用した臨場感のある研修プログラムも登場しています。FDA査察の模擬体験、国際学会での発表練習、海外クライアントとの商談シミュレーションなど、実際の業務場面を忠実に再現した研修が可能になっています。
メリット:
- 高額な海外研修なしでリアルな体験学習
- 繰り返し練習による習熟度向上
- 失敗を恐れない安全な学習環境
- 地理的制約の解消
マイクロラーニングの普及
忙しい製薬業界の従業員にとって、短時間で効率的に学習できるマイクロラーニングの重要性が高まっています。5-10分程度の短いコンテンツを継続的に学習することで、着実なスキル向上を図る手法です。
効果的な活用法:
- 通勤時間や休憩時間の有効活用
- ゲーミフィケーション要素の導入
- スパーシング効果(間隔をあけた学習)の活用
- モバイルアプリでの学習習慣化
【まとめ】製薬業界における英語研修の選び方と導入のポイント
製薬業界における英語研修は、単なる語学学習を超えて、企業の競争力向上に直結する戦略的投資です。本記事のポイントをまとめます。
製薬業界で英語が重要な理由:
- グローバル化の加速による国際連携の必要性
- 規制当局との英語でのコミュニケーション
- 国際共同治験の増加
- 海外市場への展開機会の拡大
効果的な英語研修の選び方:
- 製薬業界特化型の専門プログラムを選ぶ
- 職種別のカスタマイズを重視する
- 実務シミュレーション型の学習を取り入れる
- 継続学習システムを構築する
- 効果測定と改善サイクルを確立する
投資対効果を最大化するポイント:
- 経営層のコミットメントを得る
- 直接・間接コストを含めた総投資額を把握する
- 定量的な効果指標を設定する
- 長期的なROI計算モデルを構築する
- 新技術(AI、VR/AR、マイクロラーニング)を活用する
グローバル化が加速する製薬業界において、従業員の英語力向上は企業の持続的成長に不可欠な要素です。本記事で紹介した知見を参考に、自社に最適な英語研修プログラムの導入を検討してみてください。
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アルク 製薬業界向け英語研修 公式サイト
ベルリッツ 製薬英語公式
イーオン法人研修 製薬特化
【編集後記】
この記事は、製薬業界で15年以上の実務経験を持つライター監修のもと作成しています。各サービスの情報は2024年7月時点の公式発表・導入企業の実例に基づき、誇張や憶測を排したファクトベースでまとめました。
製薬業界における英語力の重要性は今後さらに高まることが予想されます。単なるスキルアップではなく、企業の成長戦略の一環として英語研修を位置づけ、戦略的な投資と運用を行うことが成功の鍵となるでしょう。

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